稲穂の海 黄金の波
今自分に何ができるか、何がしたいのか完全に見失っている中でも、仕事のスケジュールは容赦がない。
土曜日にもかかわらず、お客さんとのゴルフ。
もちろん、代休なんて無い。
心も体もくたびれての帰宅途中、両側には見渡す限りの田んぼ。
田んぼごとに出来の良し悪しはあるものの、田んぼ中に目一杯実りをつけた穂が風に揺られていた。
「この辺は地震と水害の両方の被害を受けたはずなのに、よくできたな~」
なんて思っていると、涙がにじんできた。
地震がおきてしばらくは忙しさで不安なんて感じる暇はなかった。
もうしばらくすると、先行きの不透明さから徐々に不安になっていった。
これからどうなるんだろうか。
眠ればまた地震が起きて、二度と目覚めないんじゃないだろうか。
根拠のない不安でいっぱいだった。
数か月前の、あの時の自分にこの風景を見せてやりたいと思った。
地震が起きても、水害に遭っても、稲は立派に穂をつけた。
あの頃は信じることができなかった「未来」が形になって目の前に現れた。
毎年見る風景が、今年は一番美しく見えた。
刈り取りまでに間に合うなら、写真を撮りに行こう。
気が早いけど来年も再来年も、種と土に希望を込めて、未来の稲穂が見られますように。
農業に未来がありますように。