【農協改革】実は最先端?JA農業協同組合のビジネスモデル
全てが悪なのか
以前の記事、
【政治団体全農】自民党はもう全農は要らない? - ミノリガタリ
でも触れましたが、農協、全農、JAと聞くと何かと悪いイメージが付きまとうようになりました。
確かに悪い面もあるのですが、こと農業ビジネスにおいては非常に優秀で、農業ビジネスに参入したい企業は是非真似したい手法をたくさん持っています。
もちろん、すでに真似している企業も多数あります。
今回はそんな農協のビジネスとはどういった手法なのか、簡単に説明します。
1:そもそも「農協」って?
そもそも農協とは「農業協同組合」の略で、簡単に言うと
「農家単体ではできない事を複数の農家で共同してやりましょう」
という団体です。
農家単体ではできない事とは例えば、大型の冷蔵倉庫を建てるとか、大量発注で資材を安く買うとか、ブランドとして売り込むとかいう、ある程度規模が大きくないとできない事などです。
この協同組合というのは何も農業に限ったものではなく、漁業、林業などでもありますし、外国でも広く採用されているシステムで、日本の農協だけに限った団体ではありません。
ではそんな農協のビジネスモデルとは何なのか?
2:簡単に言うと契約栽培
ハイ、ザックリ言うと「契約栽培」みたいなものだと想像してください。
契約栽培とは通常、
「この畑で〇〇を栽培してくれたら単価△△で全量買い取りますよ」
と言う契約。
農家としては一定の品質の物を作れば、自分でスーパーやレストランなどの売り先に営業をかけなくても契約した企業が買い取ってくれるので安心して栽培できるというメリットがあります。
ただ、企業としては買い取った野菜などを自社のブランドとして売ったりする時に、
「どんな農薬、肥料を使って、どんな栽培方法で作られたのかわからない」
では胸を張って消費者に販売できません。
買う側としても、そんないい加減なもの食べたくないですよね?
そこで企業側は、
「我が社のブランドとして買い取る条件として、我が社が指定する資材(農薬や肥料)を使って下さい(もしくは使わないで下さい)。この条件が飲めない場合は契約しません」
と言う条件を提示して、その条件で栽培できる農家と契約しています。
そうする事で自社ブランドの品質や安全性を確保して、我々消費者に安心なものを提供しているのですが、農協のビジネスは更に一歩踏み込んでいます。
企業が買い取る条件の中にある、「我が社が指定する資材」を自分たちで農家に売ってしまうのです!
これにより、ある程度品質や安全性が確保された作物を売った収益と、指定する資材を売った収益をダブルで稼ぐことができるのです!
これには指定する資材を大量購入することにより、通常より安く仕入れる事が可能になるという農家にとってのメリットもあります。
なんだかちょっとズルいような気もしますが、企業としては自社ブランドの価値を高めるためにやる事なので外野からとやかく言われる筋合いはありません。
このようなビジネスモデルは皆さんが知っているような大企業でも採用されていますし、スーパーに並んでいる野菜の中にもこのような方法で作られたものがあります。
「トマトで有名な大企業」と言えば、多くの方がピンとくるのではないでしょうか?
3:じゃあ何が問題なの?
以上で紹介したビジネスモデルは、法的にも全く問題ありませんしすでに多くの企業で実践されています。
それにそういう契約に納得いかないなら、契約を解除すればいいだけの話なのです。
じゃあなぜ農協ばかりがメディアに叩かれるのかというと、一部の問題ある農協では契約とは別の形で圧力をかけてくるから問題になるのです。
例えば、野菜の資材を農協から取らないと米の倉庫を使わせてもらえないとか、
作物の一部を農協以外に出荷したから共同の水路を使わせてもらえないとか、
常識的に考えてもおかしな方向から圧力をかけるから問題なのです。
これは農協と農家の考え方のギャップがあって、農協としては
「組合員として農協に所属しているからには農協から資材を買って、できた作物は全部農協に卸すのが当たり前!」
という考えがあるからなのです。
まとめ:ビジネスモデルとしては優秀
一部問題はあるのですが、ある程度の品質の農作物を安定して供給するためには農協にビジネスモデルは大変優秀だと言えます。
我々末端消費者も農協のビジネスモデルの恩恵を受けているからこそ、そこそこの品質の米や野菜をそこそこの価格で手に入れる事が出来ているので、
「農協=悪者」
と決めつけるのは、
「自動車は排気ガスも出すし、死亡事故の原因にもなるから悪い物だ!」
というのと同じぐらいトチ狂っていると思います。
一部の悪いことする人たちが悪いだけで、ビジネスモデル自体は今後も広く使われるべき手法です。
今後は「じゃあ何で他の企業では起きない問題が農協では起きてしまうの?」をテーマにした記事も上げていこうと思います。